銀行の監査部への異動には、出世といえるケースとそうではないケースの2種類がある。
これが本記事の結論になります。
- 俯瞰的に銀行を見る目を養うための将来の幹部候補
- 営業スキルや対人関係など何らかの問題を持つ人材
この2種類の人材が集まるのが、銀行の監査部です。
本文で詳しく解説していきます!
銀行の監査部の役割とは?
銀行における監査部の役割は大きく
の3つに分けられます。
銀行内部の監査
監査部は、
といった観点で、銀行内部の監査を行います。
監査部が監査するのは、全ての支店と部署。
したがって、預金・為替事務や事業性融資の貸出プロセス・個人ローン事務は当然のこととして、その他にも銀行システム、有価証券運用、人事・従業員の行動規範、組織ガバナンスなどあらゆる銀行機能の監査を行います。
統合リスク管理
監査部はリスク管理の専門家でもあります。
彼らは、銀行が直面しているリスクを洗い出すのみならず、将来的に発生し得るリスクを特定し、それらを軽減するための策を立案することが求められます。
また、顧客トラブルや不祥事件などリスクが顕在化した際には、監査部が発生した事案に直接介入し、調査やトラブル対応を行います。
監査の経営報告
以上の銀行内部の監査と統合リスク管理を行った結果を、内部監査報告書等にまとめて、経営会議や取締役会に報告することも監査部の重要な役割です。
この経営報告を行うことが、銀行の健全性と運営の改善点への第一歩となります。
つまり、監査部の役割には
という性質があり、他の部署とはかなり異なる存在なのです。
そのため、監査部はどこの事業部にも属さず、頭取や社長直轄の部署であることが一般的です。
銀行における監査部への異動は出世なのか?
冒頭でも紹介したとおり、銀行における監査部への異動は大きく2種類に分けられます。
- 俯瞰的に銀行を見る目を養うための将来の幹部候補
- 営業スキルや対人関係など何らかの問題を持つ人材
両者を詳しく見てみましょう。
将来の幹部候補
金融庁が2023年10月に公表した「金融機関の内部監査の高度化に向けたプログレスレポート」にて、銀行が目指すべき監査人材の育成について、以下のように書かれています。
経営監査を担う人材確保・育成
経営全体を見渡す視野を持った監査人の育成
金融機関の内部監査の高度化に向けたプログレスレポート
金融庁は、国内の銀行に対して俯瞰的な視野を持った将来の幹部候補を監査部で育成することを要請しています。
金融庁の要請にしたがい、銀行経営に必要な俯瞰的視点を養うため、監査部に異動する幹部候補がいます。
これらの人材は、銀行全体を見渡すことで、課題や潜在的リスクなどを把握し、将来的により高い視座にたった意思決定を行うことが期待されています。
つまり、出世するために監査部に異動したということです。
何らかの問題あり人材
一方で、営業スキルや対人関係に課題を持つ人材も監査部に異動することもあります。
これらの人材にとって監査部は、営業の最前線から一歩退き、銀行内部に目を向けた仕事に従事する場所であり、収益至上主義の銀行において、このケースの監査部異動は出世とは言えません。
また、よくあるのがメンタル疾患により病欠していた人が監査部に異動して復帰するケース。
監査部は、銀行内部を監査する重要な仕事ではあるものの、営業目標やお客様との交渉などストレスがかかる仕事が少なく、自分のペースを徐々に掴みながら業務に取り組める環境が整っています。
結論、監査部から出世する人は…?
結局のところ、監査部への異動を経て出世する人は少数です。
そもそも銀行において将来の経営層と見込まれるのは至難の業。
また、出世しそうか否かは、その人のそれまでの経歴を見れば一目瞭然。
・・・ということは、監査部に異動したら最後。出世が完全に断たれるのか?
答えは、NOです。
私が属する銀行には、監査部にて真摯に業務に取り組み、監査部でしか得られない経験・スキルを習得したことで、その後、大出世を遂げた人がいます。
最後に、監査部から大出世を遂げた実例をいくつか紹介します。
【実録】監査部から出世した人
何らかの事情で監査部に異動した後、監査部で期待を超える活躍をして、その後出世した人もいます。
ここからは、私の属する銀行で実際にいた監査部出身の偉い人を紹介します。
頑張りすぎてメンタルやった営業マン
営業成績が優秀な人は分かると思いますが、銀行では期末になると、支店全体の営業目標の未達部分をエース営業マンにしわ寄せする文化があります。
営業のエースはそれが分かってるので、わざわざ隠し玉を用意したりしますよね…
この期末目標へのしわ寄せが激しすぎて、メンタルを病んでしまったバリバリ営業マンのA課長代理。
数か月の病欠を経て、復帰した部署が監査部でした。
「復帰できたけど監査部か…」「Aさんは優秀だった」など、誰しもがAさんの活躍を過去のものと捉えていました。
しかし、監査部に着任したAさん。
自身の営業店での経験をもとに、営業現場における実態や不合理を監査部内で共有。そして、営業プロセスの見直しの必要性を役員会に上げる等、営業業務の改善策を次々に発信。
その結果、数年で監査部から営業店に副支店長として栄転。その後も順調に営業店を中心にキャリアを積み、部長級となるエリア母店の支店長にまで昇りつめました。
本部を転々とする謎の男
私が属する銀行には、少数ですが本部各部を転々と異動する旅人のような人がいます。
最終的に、とあるコーポレート部門の部長になったB部長もその一人。
そのB部長を有名にしたのが監査部時代。
監査部は、銀行の各セクションが規程に則り、業務遂行されているかを調査・分析することがメインミッション。
そんな常識の中、当時ヒラ行員だったB部長は『支店や銀行施策の良し悪しは、規程に沿っているかだけでなく、顧客による評価が最重要』と強く主張をしたとのこと。
このように、異動した先で新たな風を吹かせるB部長のような人は、出世する一つのパターンなのかもしれませんね!
支店長直前の監査部異動
そもそも、うちの銀行には支店長になる前に監査部に異動するケースがあります。
正直なことを言うと「この人をいきなり支店長にしても大丈夫?」という人が監査部を経由することが多いのも事実。
しかしながら、監査部では組織全体を見渡す力が身につき、様々な業務を幅広く認識できる、出世のための大切なキャリアステージ。それが監査部であると言えます。
まとめ
銀行における監査部への異動する人には2種類あります。
- 俯瞰的に銀行を見る目を養うための将来の幹部候補
- 営業スキルや対人関係など何らかの問題を持つ人材
もし、監査部に異動になった人は、自分の胸に手をあてて考えれば、自分がどちらなのかは分かるはず。
どちらのケースにしても、監査部で
- まずは絶対に腐らないこと。
- 求められた期待にしっかり応えること。
- 期待に応えた上で、自身がやりたいことや銀行をよくすることを行う。
といった活動を努力を惜しまずに続けることで、必ず出世の糸口が見えてきます。
監査部から銀行を変え、自分自身のキャリアも切り拓いていきましょう!