1994年にビル・ゲイツが残した言葉。
銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる
プレジデントオンライン
あれから約20年がたった今なお「銀行は将来なくなるのではないか?」という声が止むことはありません。
昨今の銀行は、国内マーケットの縮小や他業態からの銀行参入による競争の激化、低い生産性や価格競争による収益性の低下など数多くのネガティブ要因に頭を悩ませています。
急速に変化する社会の中で、銀行に将来はあるのか?
本記事では、現役銀行員のリアルな視点から
の3点について解説します。
本部勤務の現役銀行員だけが持つマル秘情報を盛り込んだ本記事は、銀行への就職や転職を考えている方にきっと役に立ちます。
是非、最後までお読みいただき、銀行の将来に関するヒントを得ましょう!
「銀行はなくなる」の定義

まずは、この記事で語る『銀行はなくなる』を簡単に定義しておきましょう。
この記事では、
全ての銀行がなくなってしまうのか?
ではなく
皆さんの身近にある銀行がなくなるのか?なくなる可能性はどのくらいか?
といった論点で、現役銀行員として考察します。
銀行は、行政・法人・個人すべてにお金を流通させる重要な社会インフラ。ひとつ残らず銀行がなくなることはあり得ません。
明確にしたいは、銀行倒産時代が来るのか。すなわち、経営破綻や経営統合により、銀行の数が激減する未来が来るのかということです。
銀行が将来なくなると言われる理由

ビル・ゲイツの「銀行は将来なくなる」発言から約20年。社会が目まぐるしく変化する中、ここ10年の銀行を取り巻く環境も大きく変化しています。
まずは、銀行の最新状況を踏まえた銀行が将来なくなると言われる理由を整理します。
理由は大きく、競争激化(➊➋➌)・企業体制(➍❺❻)・外的圧力(❼)の3つに分けられます。
具体的な内容は以下7点です。
- 縮小する国内マーケット
- 他業態からの銀行進出
- 商品のコモディティ化
- 高コスト体質
- 低い生産性
- 現状維持バイアス
- 金融庁の再編圧力
これら7つは全てが数珠つなぎになっています。詳しく解説します。
➊縮小する国内マーケット
日本では世界で類を見ないスピードで人口減少が進展。厚生労働省の『我が国の人口について』を見ると、
といった特徴が見て取れます。

銀行経営は経済の趨勢と連動しやすく、人口(マーケット)の縮小はダイレクトに銀行の事業環境の悪化に繋がります。
減りゆく顧客を銀行同士で奪い合う昨今、さらに競争に拍車をかけるのが、次に解説する➋他業態からの銀行参入です。
➋他業態からの銀行参入
ここ10年ほどで数多くの異業種企業が銀行業に参入しています。
たとえば、
- 小売業界(コンビニ系銀行やイオン銀行等)
- 通信事業者(auじぶん銀行等)
- 決済事業者(PayPay銀行等)
- プラットフォーマー(楽天銀行等)
など業種も多岐にわたります。

新規参入する銀行は、元々提供していたサービス(楽天銀行ならEC、イオン銀行なら買い物)と銀行サービスを掛け合わせ、新たな価値を提供して既存銀行の顧客を奪っています。
ならば、既存銀行も商品戦略による差別化で生き残りの道筋を立てたいところですが、次なる課題➌商品のコモディティ化の壁に直面します。
➌商品のコモディティ化
銀行の主要商品である預金・融資・決済サービスは無形サービスであり、差別化が困難です。

唯一の差別化要素は、金利や手数料などの価格戦略。ネット上で簡単に各行の比較ができる昨今、顧客は最も有利な条件の銀行を選択するようになります。
以上のように過熱する価格競争から銀行は逃げられなくなり、収益悪化の一路をたどります。
➍高コスト体質
多くの銀行は過剰な支店網や高い人件費など高コスト体質であるため、身を切る価格競争の限界を迎えつつあります。
さらに、厳格なコンプライアンス対応やマネロン対策、勘定系システムの維持費なども銀行の運営コストを押し上げており、収益性を圧迫しています。

❺低い生産性
高い人件費の背景には、銀行業務の低い生産性の問題があります。
銀行は伝統的に手作業や細かい事務規程が多く、マンパワーに依存した業務運営がなされています。
その結果、デジタル化や省人化が進む他業界と比較すると圧倒的に生産性が低く、人件費を加味すると赤字の支店や事業もあります。
❻現状維持バイアス
様々な難題を抱える銀行。
現状を打破するため、これまでの慣習や規制を一新し
など生き残りをかけた自己変革に取り組むべき。
しかし、それを邪魔するのが銀行を蝕む現状維持バイアス。

銀行は過去の成功体験にとらわれ、現状のままでいることに強くこだわるため、自己変革が進みにくいのです。
❼金融庁の再編圧力
金融庁は主に地方銀行に対し、持続可能な経営への移行を求めています。
一義としては、収益構造の多様化やDX推進などの自己変革を、それが困難なら経営統合・銀行再編という選択肢を銀行に突き付けています。
地銀再編支援の交付金制度延長 金融庁、5年軸に検討
日本経済新聞より
上記は、地銀が経営統合すると交付金を給付する制度を延長するというニュース。
地域銀行の経営環境が厳しさを増す中、地域銀行の合併等において独禁法の適用を除
大和総研より
外する独禁法特例法が成立した。
こちらは、地銀が経営統合を行っても独占禁止法には該当させない特例。
このように金融庁は法律を変え、交付金というインセンティブを与えてまで銀行再編を進めようとしています。
現役銀行員が感じる銀行の現状

ここからは現役銀行員が感じる銀行の現状について語って参ります。
まずもって私は、破綻あるいは経営統合により銀行が次々になくなると全く思いません。
銀行の支店・本部に勤務し、また他社への出向時に客観的に銀行を見て感じたのは、銀行の強みは侮れないぞということです。詳しく解説します。
銀行の強みとは?
銀行の強みは意外と強烈で、一朝一夕で他社が真似するのは不可能です。
現役銀行員が感じる銀行の強みは以下のとおりです。
真の課題は?
模倣しにくい強みを持つ銀行ですが、困難な局面にいることに変わりはありません。自ら強みを放棄するようなことがあれば一気に経営は傾きます。また、課題を先送りし続けることも、じわじわと自分の首を絞めることになります。
強みの維持と課題解決。ある意味で相反する両者をバランスよくこなせる人材が銀行には必要不可欠。
しかし、そういったバランス人材が非常に少ないことが銀行の真の課題なのかもしれません。
銀行の人材戦略は、課題解決のための人材を他業種からの中途採用で調達。そういった方々は、口々に銀行のネガティブな面を指摘。銀行の強みを知らずに、または蔑ろにしてしまいます。
現役銀行員としてはっきり言わせて頂くと、中途半端なスキル・経験しかない中途採用者を使って性急に銀行を変えようとしている銀行は危険です。課題の一部を解決できたとしても、銀行の強みを失っているかもしれません。
今後、銀行が行うべきことは
極めて難しいこの3つだけです。
まとめ

「銀行は将来なくなる」
現役銀行員としては、そんな将来が来るわけないと考えています。
というよりも当事者として、そんな将来には絶対にしないと強く思っています。
銀行が将来なくなると言われる以下の理由たち。
- 縮小する国内マーケット
- 他業態からの銀行進出
- 商品のコモディティ化
- 高コスト体質
- 低い生産性
- 現状維持バイアス
- 金融庁の再編圧力
銀行員が本気を出せば、どれも蹴散らせます!
こんな理由たちを蹴散らす仲間、一緒に銀行を変革する仲間を待っています!!