キャッシュカードの中でセキュリティ最強なのは生体認証キャッシュカードです。
しかし、生体認証キャッシュカードなら全ての不正利用を防げるわけではありません。
本記事では、生体認証キャッシュカードについて
に向けて、現役銀行員から見た生体認証キャッシュカードの実態を解説します。是非ご覧ください!
生体認証キャッシュカードとは

生体認証キャッシュカードとは、
- 予めカードに指の静脈を登録しておき
- 取引する際、ATMで指の静脈を読み取り
- 読み取った静脈とカードに事前登録していた静脈が一致したら
- 取引が可能になる
といった機能を持つキャッシュカードのことです。
金融庁が発表した「偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況(2024年3月)」によると、キャッシュカードを発行している銀行520行のうち、生体認証カードを発行しているのは130行で、全体の25%とのことです。
よくある勘違い
あまり馴染みのない生体認証というワードに疑問を抱く人もいると思います。
よくある疑問について一つずつ解説していきます。

生体って何?指紋とは違うもの?
生体とは、生きている状態の体の一部分のこと。
生体認証キャッシュカードの生体は指の静脈のことで、指紋認証ではありません。
指の静脈をATMで認証することで、取引が可能になります。

指をケガしたらどうなるの?
ケガ、手荒れや湿疹等が軽度であれば全く問題なし。
もし大きなケガであっても、認証用の静脈は2本の指から取るので、ケガしてない方の指の静脈で認証することが可能です。

静脈の登録やATMでの読み取りって痛いの?
事前の静脈登録、ATMでの静脈読み取りともに全く痛くありません。専用のセンサー機に指を入れて数秒で処理が終わります。
出血することも腫れることもありません。
いつ頃できた機能か?
2001年に日本で最初の偽造キャッシュカードによる不正出金被害が確認されたことで、金融当局が生体認証キャッシュカードの導入を後押し。
その後、2005年に三井住友銀行が日本初の生体認証キャッシュカードの発行を開始。
つまり、生体認証キャッシュカードは最新鋭の技術を使って…、ということではなく20年以上も前からあったカードという点は認識しておきましょう!
生体認証キャッシュカードのメリット

生体認証キャッシュカードのメリットは、他者による不正利用の一部を防止できる点のみです。
防止できるケースは以下のとおりです。
- カード盗難時の悪用
カードを盗まれたとしても、持ち主の指静脈が無い限りATMで出金できません。 - カードの偽造
磁気ストライプの偽造はできても、人間の生体情報は偽造不可能です。 - スキミング
ATMに磁気読取り機(スキマー)を不正に設置し、磁気情報を盗むスキミング。磁気は盗めても生体は盗めません。
生体認証キャッシュカードのセキュリティの高さがお分かり頂けたと思いますが、1点だけ重要な注意点があります。
それは、生体認証キャッシュカードは生体認証対応型ATMで使わないと意味がないという点です。
生体認証に対応していないATMの場合は、他のキャッシュカード同様に磁気ストライプやICチップでの取引となります。

つまり、悪意ある人が生体認証キャッシュカードを持って、普通のATMに行けば通常どおりの取引が可能ということです。
生体認証キャッシュカードのデメリット

セキュリティが高い生体認証キャッシュカードですが、実は多くのデメリットがあります。具体的には以下の5点です。
- 発行手数料がかかる
新たにカードを発行する際、550円~2,200円(税込)ほどの手数料がかかります。 - 支店に行く必要がある
支店にて指静脈の登録が必要。また、カード更新時にも支店で指静脈登録が必要です。 - 家族は使えない
取引時に持ち主の指静脈が必須なので、本人以外は取引できません。※そもそも家族がキャッシュカード使ってもいいのか?は下の記事をチェック! - 静脈認証に時間を要する
気温が低いと血の巡りが悪くなり、指静脈がうまく読み取れないと取引に時間がかかります。 - 普通のATMだと全く意味がない
前述のとおり生体認証対応型ATMでなければ、磁気ストライプでの取引になるためセキュリティは一般レベルに下がります。
他のカードとの比較

デメリットも多い生体認証キャッシュカード。
そもそも他の種類のキャッシュカードと比べて、どのくらい優れているのか?
この章では、
3つの比較結果を紹介します。

通常のキャッシュカードとの比較
生体認証キャッシュカードのメリットは以下3つの不正行為を防止できる点でした。
- カード盗難時の悪用
- カードの偽造
- スキミング
通常のキャッシュカードでは上記3つに対しては
- カード盗難時の悪用
カードを盗難した上で暗証番号も知られたら悪用されます。逆に言えば、暗証番号さえ漏れなければ悪用不可能。 - カードの偽造
磁気ストライプの偽造は下火になったとはいえ、通常のキャッシュカードでは防ぐことは困難。 - スキミング
昨今、スキミング防止機能付きのATMが普及しており、通常のキャッシュカードでも危険性は低いです。
ということで、生体認証キャッシュカードに優位性があるのはカードの偽造を防げる点のみです。
一方、生体認証キャッシュカードの5つのデメリット。通常のキャッシュカードでは以下のとおりです。
- 発行手数料は…
かからない。 - 支店に行く必要は…
なし。 - 家族は…
基本的には禁止されてますが使えます。 - 取引のとき時間を要することは…
特殊な操作は無いので時間はかからない。 - 普通のATM…
だろうが何だろうがセキュリティは一定。
まとめると、カード偽造などの不正利用を可能な限り防ぎたい人は生体認証キャッシュカードを持つべきです。
そう思わない人は、通常のキャッシュカードでも差し支えありません!
ただし、暗証番号が他人に漏らさない点だけは絶対に注意しましょう。
IC付キャッシュカードとの比較
次はIC付キャッシュカードとの比較です。
まずは、生体認証キャッシュカードで防げる3つの不正行為。IC付キャッシュカードでは以下のとおりになります。
- カード盗難時の悪用
カードを盗難した場合、暗証番号も知られていたら悪用される。逆に言えば、暗証番号さえ漏れないようにすれば大丈夫。 - カードの偽造
生体認証キャッシュカード同様に防止することが可能。 - スキミング
生体認証キャッシュカード同様に防止することが可能。
次は5つのデメリット。IC付キャッシュカードでは以下のとおり。
- 発行手数料は…
基本かからない。 - 支店に行く必要は…
当然なし。 - 家族は…
使える。ただし基本的に禁止されているので自己責任で。 - 取引のとき時間を要することは…
特殊な操作は無いので時間はかからない。 - 普通のATM…
だろうが何だろうがセキュリティは一定。
ということで、ご覧のとおりIC付キャッシュカードは、生体認証キャッシュカードに近いレベルのセキュリティがありながらもデメリットが少ないカードです。
現役銀行員としては、IC付キャッシュカードで十分であると考えています。
まとめ

生体認証キャッシュカードは、ATM取引時に指静脈の認証が必要なので、悪意ある第三者の以下の不正行為を防止することができます。
- カード盗難時の悪用
- カードの偽造
- スキミング
一方で、以下5つのデメリットもあります。
- 発行手数料がかかる
- 指静脈の登録のため支店に行く必要がある
- 家族も使えない
- 取引のとき時間を要することも
- 普通のATMだと全く意味がない
現役銀行員の視点から言うと、正直IC付キャッシュカードで十分と感じます。
この記事の内容を参考に、ご自身にあったキャッシュカードを選択しましょう!



