銀行において、名寄せは単なるデータ管理方法の一つではなく、銀行の業績をも左右する重要な要素。
しかし、銀行員でも「名寄せ=ペイオフ」と勘違いしている等、名寄せの重要性を理解してない人もいます。
本記事では、銀行本部に勤務する現役銀行員が、
を解説してまいります。
これから名寄せについて学びたいビジネスマンにとって、銀行の名寄せの基本から応用まで学べる記事に仕上げています。
この記事を通じて、名寄せの重要性を理解し、実務に役立てていただければ幸いです。
名寄せとは?
まずは、名寄せの基本的な概念とその重要性を具体例を交えて解説します。
名寄せには、大きく2つのニュアンスがあります。
複数支店の取引を集約
一つは、複数の支店で取引がある人をデータ上でも同一人物と見なせるようにすること。
異なるシステムの情報を統合
続いて、名寄せの二つ目の意味合いは、異なるデータベースやシステムに存在する同じ顧客の情報を一つにまとめることです。
名寄せは、データの正確性を保ち、顧客のことを正しく理解するために欠かせない極めて重要なプロセス。
銀行にとって、名寄せは単なるデータ管理の手法ではなく、重要な戦略的要素となっています。
名寄せが銀行にとって重要な理由
名寄せが銀行にとって、戦略的に重要な理由は、大きく2つあります。
ペイオフ
まず第一に、銀行は預金保険機構の取り決めにより、顧客情報を正確に管理するため、名寄せを行うよう求められています。
理由は、銀行破綻時の預金の取扱い(ペイオフ)に関する必須事項だからです。ペイオフとは以下のとおりです。
万が一金融機関が破綻した場合、預金保険で保護される預金などの額は、 ~~(中略)~~ 1金融機関ごとに合算して、 預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
預金保険機構
ご覧のとおり、銀行破綻時には預金保険機構が『破綻銀行における預金者1人あたり最大1,000万円+利息』を預金者に支払うことが定められています。
したがって、銀行は常に複数の支店に預金がある預金者も預金者1人として預金総額を把握している必要があるのです。
効果的な営業
次に、名寄せが重要な2つ目の理由は、名寄せ不十分だと顧客の資産や契約状況を正しく把握できず、営業活動に支障をきたす恐れがあるためです。
例えば、
- 東京支店に預金100円、大阪支店に1億円の預金があるXさん。
- 名寄せができていないと、東京支店のXさんと大阪支店のXさんは別人格と見なされます。
- よって、東京支店の口座だけ見るとお金が無いのでローンのターゲットにされます。本当は大阪支店に1億円もあるのに…。
ということが起きてしまいます。
名寄せが正しくないとどうなる?
名寄せが正しく行われてないと、銀行にとって2つの大きな問題が発生します。
この2つというのは、先に紹介した名寄せの2つの重要性と完全にリンクするもの。名寄せの重要性とその問題をセットで把握しておきましょう!
預金保険機構からの摘発
名寄せをしっかり行っていないと、預金保険機構から摘発される可能性があります。
預金保険機構は、銀行破綻時に預金者1人ごと最大1,000万円とその利息を支払う責務を負っています。
したがって、銀行の名寄せが不十分だった場合、同一人物なのに別人格と見なして余分にお金を支払う事態が発生。
そのため、預金保険機構は銀行の名寄せを監視しています。そして、もしも名寄せ不備が頻発し改善しなければ、罰金や業務改善命令などのペナルティを課すことがあります。
こうなると銀行の信用が著しく損なわれるだけでなく、経済的な損失も避けられません。
誤情報による営業リスク
次に、顧客のニーズとは異なる営業活動を行ってしまうリスクもあります。
名寄せが正確でないと、先ほどの例のように顧客を正しく理解できません。
その結果、顧客が本当に必要としているサービスや商品を提供できず、顧客満足度が低下する可能性があります。いくつかの例を挙げます。
このように顧客にとって不要な営業や案内をしてしまうと、信頼関係が損なわれるだけでなく、最悪の場合には取引を他の銀行に移ってしまうことも考えられます。
名寄せの具体的方法
名寄せの重要性がお分かり頂けたところで、名寄せの具体的な方法について簡単に紹介します。
ポイントとなるのは、銀行内の各種データをいかにして同一人物と判定するかです。
同一人物の判定に使う情報は、銀行によって異なりますが、概ね以下のとおりになります。
- 氏名
- 性別
- 年齢
- 住所
- 電話番号
これらの情報が同一の顧客は同一人物となるよう名寄せ処理が実行されています。
名寄せの種類
ここまでの名寄せの説明は、個人の名寄せの内容でした。
実は、銀行の名寄せにはいくつかの種類があります。
ということで、最後に銀行が扱う名寄せの種類を一挙紹介していきます!
まとめ
銀行が行っている名寄せ処理は、ペイオフのみならず、正しく顧客を理解するという点で銀行経営において非常に重要な情報管理です。
名寄せを十分に行っていないと、
といった事態に陥りかねません。
銀行では、名寄せをはじめ顧客情報の取扱いは、セキュリティ含め徹底的に整備・管理を行っています!