「銀行の審査部って何するところ?」と思ってネット検索したそこのあなた!

多くのウェブサイトで、びっくりするくらい誤った情報が記載されているのでご注意を!
審査部は、銀行の与信判断(融資するな否かの判断)を担う重要なセクションです。
しかしながら、審査部に属する全ての行員がエリートではありません。
また、そもそも与信判断は審査部の業務のほんの一部です。
この記事では、現役銀行員だからこそ知っている実際の審査部の仕事内容を解説しつつ、他のサイトで紹介されている誤った情報を正します。
金融業界に興味のある方や、銀行の仕組みについて理解を深めたい方は是非ご覧ください!
審査部は個人のローン審査はしない!

審査部の仕事は、お客様から依頼があった融資について、お金を貸すか否かを判断すること。これを与信判断(融資審査)と呼びます。
審査部の与信判断。その対象は企業への融資だけです。
個人が申込んだ住宅ローンやカードローンなどの審査は一切行いません。
一般的に個人ローンは申込み人の年齢・年収・他の借金など決められた情報をもとに、機械的に審査を行います。
一方、企業の融資は、
など様々な要素で成り立っており、個々の融資案件ごとに千差万別。
したがって、企業融資を審査部するのは、幅広く専門性を持つ審査のプロ・審査部が担うことになっています。
そもそも審査部と呼ばない銀行もある!

企業融資の審査を行う審査部。
・・・なのですが、全ての銀行が審査を行う部署を、審査部と名付けているわけではありません。
というより、審査部よりも融資部と呼ぶ銀行の方が多いです。
具体的には以下のとおりです。
審査部の役割は融資審査のみにあらず!

銀行の審査部は単に融資審査を行うだけではありません。
銀行の審査部は大きく4つのセクションに分けられます。
- 審査
- 格付・自己査定
- 個別支援
- 融資企画
ぞれぞれのセクションの特徴と業務概要を詳しく解説します。
①審査
審査業務は、審査部の本業中の本業です。
先に紹介したとおり、企業からの融資依頼は千差万別。財務諸表の分析のプロの目で、企業業績の良し悪し・将来性・返済目途などを明らかにします。
また、企業は業種によって、ビジネスモデルや偏在するリスクが全く異なります。
例えば、企業の収入である売上。
小売店や飲食店だと毎日少額の売上が立つもののキャッシュレスで支払われると、売上入金が1か月後になる。建設業は基本、工事完了後の後払い。したがって、売掛金や未収金での売上計上が通常。
このように業種によって融資審査でチェックすべき箇所も異なるため、審査セクション内で業種別にチームを組成するケースもあります。
②格付・自己査定
銀行は、金融庁から『融資先企業の業績を評価して、銀行の融資全体のリスクを査定(測定)すること』を求められています。(参考:金融庁HP)
銀行はリスクを測った後、返済されなさそうな融資分のお金(貸倒引当金)を準備しなければいけません。
上記の融資先企業の業績評価は、支店が行った後に審査部の格付・自己査定チームが最終チェックを行います(※銀行によっては①審査担当と②格付・自己査定担当は同じ)。
つまり、審査部では個別の融資案件の審査も行うし、定期的に企業そのものの評価(審査)も行うということです。
③個別支援
融資先企業の中には、売上不振・資金繰りの悪化・過剰投資など様々な理由で、融資の返済ができなくなる企業もあります。
そんな経営不振先に対して、経営を立て直し、滞りなく返済できるよう個別の支援を行うのも審査部の仕事です。
その支援は、ただ単に返済計画を練り直すだけでなく、経営不振の原因発掘・解決、本業支援など幅広いサポートを行います。
また、返済が滞りかけている先への延滞督促も審査部門が担う銀行もあります。初回の督促は支店担当者が行い、繰り返し延滞するような事態になれば、管理が審査部門に移り、督促→業況ヒアリング→課題解決・本業支援といった流れで、不芳企業の支援を行います。
④融資企画
銀行は様々な分野のセクションがあり、それぞれの分野に企画セクションがあります。
そして、審査部内にも審査企画(融資企画)セクションがあります。
審査企画セクションでは、審査指針策定、審査の標準化、関連法令への対応、融資臨店、融資に関する人材育成、融資審査システム等の運営管理など非常に幅広い業務を担っています。
特に重要な審査指針の作成には、銀行全体の与信ポートフォリオの管理が含まれます。
特定の企業や業種ばかり融資を行っていないか?悪化事業先の割合が増えていないか?市場運用などとの資本投下のバランスは取れているか?など様々な観点で、銀行全体の融資業務を運営しています。
本当に審査部はエリートなのか!?

銀行の審査部は、財務分析や企業経営に関する高度な知識、経営不振の企業と向き合う胆力が必要であり、優秀な人材が集まります。
しかしながら、結論をいうと…
- 審査部はトップクラスのエリート部門ではない
- 審査部所属の全員がエリートとは言えない
です。
繰り返しになりますが、審査部にも極めて優秀な人がいます。審査セクションで辣腕を振るい、審査企画セクションで融資戦略の方向性を定める等の活躍を経て、ゆくゆくは審査担当の役員になったりします。
一方で、審査部に集まる人材は、融資に特化した専門性を持つ人が多く、人によっては銀行員としてのバランスに偏りがある人もいます。
例えば、
といったケースがあります。
審査部の位置づけは、経営企画部門や人事部門に比べると若干劣ると言わざるを得ません。

他サイトの嘘を見抜く!

ここからは『銀行 審査部』で検索した際にヒットするウェブサイトの誤った審査部情報について解説します。
銀行に勤めたことがない人のデタラメな情報には注意しましょう!
組織構造
審査部は通常、以下のような階層構造を持っています。
1. 審査部長 2. 審査課長 3. 主任審査役 4. 審査役 5.審査担当
某ウェブサイト
主任審査役なんて聞いたことがありません。
また、部長と課長の間には、副部長または担当部長・次長がいます。
さらには、審査担当という役職は無いですし、審査を担当するのは審査役です。
資格
銀行審査部で働くためには、以下のようなスキルと資格が重要です。
簿記検定や金融関連の資格(CFP、FP技能士など)
これらのスキルと資格は、審査部エリートとしての地位を確立するための基礎となります。
某ウェブサイト
審査部で働くにあたりFPは全く必要ありません。重要でもありません!
審査部で重要視される資格は、中小企業診断士や不動産鑑定士など専門性が高い資格です。
FPごときでエリートと見なされるほど、銀行は生ぬるい組織ではありません。
選抜プロセス
審査部への配属は、通常、厳しい選抜プロセスを経て行われます。多くの場合、以下のような要素が考慮されます。
某ウェブサイト
- 学歴
- 銀行内での業績
- 適性試験の結果
- 面接評価
現役銀行員からすると「よくここまでウソを書けるな…」とビックリします。
審査部に異動するための適性試験なんてありません。
そして、謎なのが面接評価。審査部に異動するために採用面談みたいなことをすると勝手に思っているようですが、銀行内で異動の選抜面談はありません。
しいて言えば、支店長面談で希望部署を伝えるくらいです。
責任の重さ
審査部の仕事は、非常に高いストレスと責任を伴います。一つの判断ミスが銀行全体に大きな影響を及ぼす
某ウェブサイト
審査部の一つの判断ミスが銀行全体に影響を及ぼさないよう、審査企画セクションが与信ポートフォリオを運営しています。
また万が一、与信判断ミスで貸倒れが発生しても、貸倒引当金を積んでいるので、即時的に銀行の経営が傾くことはありません。
審査部出身者の地位
審査部出身者が役員に就くケースも少なくありません。
某ウェブサイト
審査部出身者が役員に就くケースは「少なくない」ではなく「必ずある」が正しい表現です。
金融庁は上場企業に対して、役員体制における多様性の確保を求めています。
例えば、役員全員が営業スペシャリストだったら、融資は増えそうですがリスクが高い融資も多くなりそうです。
リスクとリターンがバランシングするよう、銀行には融資担当役員が必ずいます。
『審査部出身者が役員に就くケースも少なくありません』という曖昧な表現は間違いで、『銀行には審査部出身の役員が必ずいる』が正しい情報です。
ネットワーキングの重要性
審査部エリートにとって、ネットワーキングは非常に重要です。以下のような方法でネットワークを構築できます
某ウェブサイト
- 社内の異部門との交流
- 業界セミナーへの参加
- SNSの活用(LinkedIn等)
???
もはや何がいいたいのか、さっぱり分かりません。
基本、銀行員はSNSでの銀行情報の発信は禁止。また、身元があいまいな不特定多数と接触するSNSは極力控えるように言われています。
まとめ

企業融資の審査を担う審査部。
審査部の仕事は、審査だけでなく
など様々な業務があります。
審査部に異動になると、確実にエリートコースに乗ったとは言えませんが、審査部は銀行融資の根幹をつくる重要セクション。
審査部でしか経験できない仕事を通じて、企業融資のプロフェッショナルになれます!