銀行の定年が早い理由を現役銀行員が語る!

銀行員を極めたい

「一般的な企業よりも銀行の定年は早い」「銀行の定年は55歳」と言われますが、銀行も定年は60歳です。

では、銀行員の定年が早いと言われるのはなぜか?

本記事では、

の3点について解説します。

現役銀行員の視点から、銀行員55歳定年説の真実や銀行の定年制度の今後について考察し、銀行員のキャリアがどのように変わっていくのかを探ります。

銀行業界の働き方に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください!

一般的な企業の定年は何歳?

日本の企業では、定年=60歳が一般的です。

それもそのはず、定年を60歳とすることは法律で定められています。

事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。

高齢者等の雇用の安定等に関する法律

多くの会社では60歳をもって正社員としての登用を終了しつつ、本人と会社の同意のもと嘱託社員またはパート勤務というかたちで雇用関係を継続することがほとんどです。

しかしながら、近年では労働人口が大きく減少しており、また働き方改革の余波もあり、高齢者の雇用延長の動きが活発化しています。

2021年に改正された高年齢者雇用安定法では、企業に対し70歳までの就業機会の確保を努力義務として課しています。

主な改正の内容として、事業主は、
(1)70 歳までの 定年の引上げ 
(2)定年制 の廃止  
(3)70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)  
(4)70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入  
(5)70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
のいずれかの措置を講ずるよう努めることとされています。

厚生労働省

また、企業側には経験豊富な人材の知恵を引き続き活用したいという思いと、急に世代交代することへの慎重なスタンスがあることは否めません。

時代の変化とともに、一般企業の定年が延長傾向にある点は押さえておきましょう。

銀行の定年は何歳なのか?

事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。

高齢者等の雇用の安定等に関する法律

高齢者等の雇用の安定等に関する法律は当然、銀行にも適用されます。

したがって、銀行の定年も60歳です。

では、なぜ銀行の定年は55歳と言われるのか?

それは、銀行には役職定年制度があるからです。銀行員は55歳になると役職定年となり、役職と役職に伴う権限が全て無くなります。

50歳くらいから

銀行員は55歳になる前に順次、関連会社や取引先に出向していきます。

50歳を越えてからの出向は、役職はそのままの在籍出向となります。

例えば、関連子会社の○○リースへ出向(担当部長待遇)といった出向辞令が出ます。

55歳になると

出向先の会社に勤務し続け、55歳を迎えたところで役職定年となり、基本的には銀行の籍が失われ、出向先に完全移籍することになります。

なお、地方銀行での出向は55歳ギリギリになる人が多く、54~55歳で役職定年となり出向または権限が無い職位で銀行に勤務し続けることになります。

55歳を節目とする理由

銀行が55歳で役職定年とする理由は、大きく分けて3つあります。

【理由①】まず第一に挙げられるのは賃金の問題。銀行員は非常に給料が高いです。

産業種類ごとの労働者数と給与額

銀行にもよりますが、50歳以上の管理職ともなると最低でも年収1,200万円以上。

あまりに給料が高いので、法律で定められる60歳の定年までこの給与水準をキープするのは困難。したがって銀行としては支払わないといけない賃金を減らすために、55歳での役職定年を導入しているということです。

【理由②】次に挙げられるのは、他社への出向を促進したいという銀行側の思惑です。

企業財務に詳しい銀行員は多くの場合、出向先の財務部や経理部に所属します。そして、出向先企業の財務を洗いざらい理解した上で、銀行との取引を強化します。

つまり銀行は役職定年となった銀行員を取引企業に送り込むことで、その企業との取引を強化したいという考えなのです。

【理由③】55歳の役職定年の最後の理由は、行員の間の出世競争を加速するためです。

現役銀行員としては、これが最大の理由であると考えています。

給料が激減し、銀行での権限を奪われる役職定年。これを避けるには、役員・執行役員になるしかありません。

銀行員たちは役員の座を得るため、仕事で成果を上げるべくモーレツに業務に励んているのです。

55歳以降のセカンドキャリア

55歳での役職定年は、銀行員にとって節目のイベント。この時期からセカンドキャリが始まります。

では、55歳以降にどのようなセカンドキャリアを歩むのか?

銀行員の4つのセカンドキャリアを紹介します。

銀行から指定された出向先で働く

最もスタンダードなセカンドキャリアが、銀行の指示どおりの出向先でのキャリアです。

銀行にとっても本人にとっても最も安定的なセカンドキャリア。

ただし、出向先の働き方が合わずに苦しむ銀行員もいます。そんな人は次に紹介する銀行に残り続ける自分で働く会社を見つけるに切り替えることもあります。

銀行に残り続ける

これから増えそうなのが、銀行に残り続けて働くセカンドキャリアです。

冒頭で紹介しましたが、高年齢者雇用安定法の改正により70歳までの雇用継続が努力義務となっています。

また、銀行も他業界に漏れず人手不足。銀行側としても、長らく銀行で働き続けてきたベテランの安価な雇用を進めていくと考えられます。

自分で働く会社を見つける

セカンドキャリアは自分のやりたいことをやりたい!

そんな銀行員は、自ら次に働く会社を見つけるという選択肢を選びます。

特に多いのは、役職定年後に銀行から与えられた出向先が気に入らないケース。本当にやりたいことができる最後のチャンス。このタイミングで自ら動き出す人は結構多いです。

さらに言えば、働きたい会社が見つからない人は、次の自ら起業するという手段を取ります。

自ら起業する(自ら稼ぐ)

銀行員をやりながら、自分だけのビジネスプランを練っている人は結構多くいます。

ただし、それを本当に実現する、すなわち自ら起業する人は少数です。

自ら起業する事例としては

  • 中小企業診断士事務所の運営
  • 行政書士として活動
  • 銀行コンサル(銀行との付き合い方をアドバイス)
  • 銀行員時代のコネを活かした起業

などが挙げられます。

55歳の役職定年に対する銀行員の本音

55歳での役職定年。

奪われる権力と減りゆく給与。

肩書きも失い、これまでの部下が上司になる。

当然、銀行員は役職定年に対し、非常に強いネガティブな思いを持っています。

銀行員にとって最も大きなデメリットの一つが給料の減り方です。管理職であれば1,200万円以上あった年収が、役職定年になると6~700万円に。つまり年収が一気に半分近くまでに下がります。

給与が半分になる一方で、仕事内容はいきなり半分になる訳ではありません。特に本部では、役職定年前とほぼ同じ仕事をしているのに給料が激減。

銀行員が役職定年を忌み嫌う気持ちも分かりますよね!

今後、銀行の定年はどうなるのか?

50歳~ 他社への在籍出向
55歳  役職定年
55歳~ 他社へ転籍出向

上記の銀行の定年制度は今後、少しずつ変化していくことが予想されます。

今後の変化のキーワードは二極化です。

周囲の変化に対し柔軟に対応できる優秀な人は

  • 役職定年が55歳から60歳に繰り上がる
  • 他社への出向でなく、銀行に残り続ける
  • 執行役員への任用

など銀行で働く機会が広がるでしょう。

一方、変化に対応できないタイプの人に対しては

  • 早期の他社出向
  • 役職定年年齢の引き下げはないにせよ
  • そもそも上位の役職に就けなくなる
    (出世しにくくなる)

といった厳しい処置が予想されます。

その背景には、恐ろしいほどの速さで進展するデジタル化、人類史上類を見ない人口減少と高齢化、それに伴う働き方の多様化など、銀行を取り巻く環境の大きな変化があります。

銀行は今後も重要な経営資源である人材の在り方について見直しを行い続けることが予想されます。

まとめ

まとめ

銀行員の定年は一般的な企業と同様に60歳です。

しかし、役職定年制度により55歳をめどに権限と高い給与を失うと同時に、他社への出向などセカンドキャリアに踏み出します。

今後は、人口減少や働き方改革の影響で、銀行員の定年制度は大きく様変わりするかもしれません。

引き続き当ブログでは、現役銀行員の視点と経験から最新の銀行動向を紹介して参ります!

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