2024年7月、ついに日本のお札が新しいデザインになりました!
「預金封鎖が起きるのでは?」という心配もありましたが、今(2025年1月)のところ、預金封鎖の動きは全くありません。
しかし、今後どのような事態が起こるのか分かりません。
本記事では、現役銀行員の目線で
を解説します。是非ご覧ください!
預金封鎖について
まずは、預金封鎖の基本について確認していきましょう。
預金封鎖とは?
預金封鎖とは、銀行に預けている預金を自由に使えなくなる、または使える金額が制限されること。
預金封鎖には、大きく2つの種類があります。
- 特定の銀行だけが行うケース
- 政府の命令で、全ての銀行が一斉に行うケース
前者の「銀行単独の預金封鎖」は、預金の取り付け騒ぎを抑えるために実施するものです。
「預金の取り付け騒ぎ」とは
Wikipedia「取り付け騒ぎ」
預金者が預金・貯金・掛け金等を取り戻そうとして、金融機関の店頭に殺到し、混乱をきたす現象のこと。

一斉に預金を引き出されると、銀行は債務超過に陥り、経営破綻することも。
今、話題になっているのは後者の政府命令の預金封鎖です。
過去の預金封鎖の実例とは?
過去には、以下のような預金封鎖の実例があります。
- 1933年 アメリカ合衆国
- 1946年 日本
- 1990年 ブラジル
- 2001年 アルゼンチン
- 2002年 ウルグアイ
- 2013年 キプロス
注目すべきは
- 国際的に見れば、近年でも預金封鎖があった点
- 過去、日本でも預金封鎖があった点
の2つです。

1946年は、日本が敗れた第二次世界大戦直後。日本経済がズタボロだった時代です。
なぜ預金封鎖が2025年に噂されるのか?
預金封鎖とは、政府の命令で預金を自由に使えなくなることと聞くと

何のために??
って思いますよね。
ということで、次は
- 預金封鎖の目的
- 今、預金封鎖がウワサされている理由
を確認しましょう。
預金封鎖の目的とは?
預金封鎖の目的は
- ハイパーインフレを抑制するため
- 国の収入を増やすため
の2つです。
預金封鎖でハイパーインフレがおさまる理由
ハイパーインフレーション
すべての商品の価格が上昇し、現地通貨の実質的な価値が急速に失われていく。
Wikipedia「ハイパーインフレーション」
一般にインフレは、モノの価値があがることと説明されます。
しかし経済学的には、逆の捉え方をすることが多いです。
それは、インフレとはモノに対して通貨の価値が下がっているという捉え方です。

どういうことかと言うと
ということです。

預金封鎖により円を使えなくすることで、円は希少なものと捉えられ、価値が上昇します。
預金封鎖で、国の収入が増える理由
預金封鎖で直接的に、国の収入が増える訳ではありません。
預金封鎖と同時に、政府が預金の一部を徴収することで国が収入を得る場合があるのです。
- キプロスで経済危機が発生。
- 国内の預金者に、国の損失を負担させる政策を立案。
- 政府主導の預金封鎖を実施。
- 10万ユーロ(当時、約1,300万円)を超える預金を没収。
以上のように、預金封鎖後に政府が預金の一部徴収あるいは税金として徴収といったかたちで、収入を得ることがあります。

国が預金の一部を奪うために、預金を引き出せなくするってことですね!
今、なぜ預金封鎖がウワサされるのか?
今、日本で預金封鎖がウワサされる理由は1946年に日本で預金封鎖された状況と似ているからです。
似ている状況とは以下の2点です。
- インフレ
- 新札を発行するタイミング

ここで重要なのは、1946年に似ているだけで同じではないこと。詳しくは続きをご覧ください。
預金封鎖の可能性2024年
それでは、日本で本当に預金封鎖が行われるのか?
現役の金融マンの視点でこたえると、預金封鎖の可能性は極めて低いと考えています。
理由は大きく4つです。
可能性が低い理由①:動機がない

預金封鎖の可能性が低い最大の理由が、預金封鎖を行う動機がないことです。

でも、今ってインフレ状態なので、預金封鎖でインフレ抑制すべきでは?
現在は、インフレ状態ではなく、デフレ(モノの価格が低すぎる状態)から抜けようとしている状態です。1946年の第二次世界大戦後の経済混乱期とは、全く違います。

1946年にもあった新札発行のタイミングじゃないか!
1946年は、新札発行がきっかけではなく、預金封鎖の効果を強めるため、新札を発行し、預金封鎖と預金没収を行ったのです。
可能性が低い理由②:法的根拠がない

1946年に日本で預金封鎖が行われた際は、金融緊急措置令(昭和21年2月17日公布即日施行)に基づき、預金封鎖が実施されました。
この金融緊急措置令は、昭和38年7月22日に廃止されています。
したがって現状、日本で預金封鎖を行おうとしても法律上、不可能です。
もちろん、今から関連法案を整備することはできますが、その場合には次の理由③で、預金封鎖は困難だと考えられます。
可能性が低い理由③:効果がない

これから預金封鎖を行う場合、預金封鎖を可能とする法律が必要。
インターネットはおろかテレビも無かった1946年であれば、密かに法律を制定して預金封鎖できたでしょう。
しかし、情報にあふれる現在では、預金封鎖に関する法案の審議を開始した時点で日本全体に知れ渡り、預金が封鎖される前にお金をおろされると考えられます。
つまり、預金封鎖の効果は発揮されません。
可能性が低い理由④:できない

銀行の立場からすると、預金封鎖は事務的に難しいです。
1946年当時は、銀行窓口での出金を止めるだけで済んでいた預金封鎖。
現在では、お金を引き出すにはATM・インターネットバンキングなどがあり、また自動で預金口座から引き落される自動振替やデビッドカード取引など、預金が使われる方法が数多くあります。
これら、一つひとつの取引を停止するのは困難ですし、口座振替の中には税金収納などもあることから、政府が預金封鎖を行う意義に欠けると考えられます。

ATMが登場したのが1977年。
IBは1990年代。
口座振替は1961年。
今後、私たちが注意すべきことと対策

預金封鎖の可能性は極めて低いです。
しかし万が一、預金封鎖となった際に困らないよう経済・金融動向を注視しましょう。
そして、もし預金封鎖の検討が始まった場合には、預金以外の方法で資産を保有するようにしましょう。
具体的には以下の方法があります。
- お金をおろして、現金で持っておく
- 外国の銀行に送金する
- 投信・不動産・金などの資産
まとめ

今後、日本で預金封鎖が行われる可能性は極めて低いです。なぜなら
- 預金封鎖を可能とする法律は廃止されている
- 預金封鎖しようとしても、意味・効果がない
- お金をおろす手段が多すぎて事務上、困難
- 預金封鎖が必要なほどインフレではない・日本財政は緊迫してない
といった理由が挙げられます。
とはいえ、万が一にも預金封鎖が行われないか金融・経済動向には注意しつつ、ご自身の財産を守るよう心掛けましょう!!