2024年7月、ついに日本のお札が新しいデザインになりました!
従前は「預金封鎖が起きるのでは?」という心配の声がありましたが、今(2024年8月11日時点)のところ、預金封鎖の動きは全くありません。
しかし、今後どのような事態が起こるのか分かりません。
本記事では、現役銀行員の目線で
- 預金封鎖とは何か?
- なぜ今、預金封鎖がウワサされているのか?
- 預金封鎖の可能性は?
- 今後、私たちが注意すべきこと
を解説します。
是非ご覧ください!
預金封鎖について
まずは、預金封鎖の基本について確認していきましょう。
預金封鎖とは?
預金封鎖とは、
銀行に預けている自分の預金を自由に使えなくなる、または使える金額が制限されること。
預金封鎖には、大きく2つの種類があります。
- 個々の銀行が単独でおこなうケース
- 政府の命令で、全ての銀行が一斉におこなうケース
前者の「銀行単独の預金封鎖」は、預金の取り付け騒ぎを抑えるために実施するものです。
「預金の取り付け騒ぎ」とは
Wikipedia「取り付け騒ぎ」
預金者が預金・貯金・掛け金等を取り戻そうとして、金融機関の店頭に殺到し、混乱をきたす現象のこと。
一斉に預金を引き出されると、銀行は債務超過に陥り、経営破綻することも。
今、話題になっているのは後者の「政府命令の預金封鎖」です。
過去の預金封鎖の実例とは?
過去には、以下のような預金封鎖の実例があります。
- 1933年 アメリカ合衆国
- 1946年 日本
- 1990年 ブラジル
- 2001年 アルゼンチン
- 2002年 ウルグアイ
- 2013年 キプロス
注目すべきは
- 国際的に見れば、近年でも預金封鎖が行われていること
- 過去、日本でも預金封鎖されたこと
の2つです。
1946年は、日本が敗れた第二次世界大戦直後。日本経済がズタボロだった時代です。
なぜ預金封鎖が2024年にウワサされているのか?
預金封鎖とは『政府命令で、預金を自由に使えなくなること』と聞くと
何のために??
って思いますよね。
ということで、次は
- 預金封鎖の目的
- 今、預金封鎖がウワサされている理由
を確認しましょう。
預金封鎖の目的とは?
預金封鎖の目的は
- ハイパーインフレを抑制するため
- 国の収入を増やすため
の2つです。
預金封鎖で、ハイパーインフレがおさまる理由
ハイパーインフレーション
すべての商品の価格が上昇し、現地通貨の実質的な価値が急速に失われていく。
Wikipedia「ハイパーインフレーション」
テレビ等では、インフレを『モノの価値があがること』と説明することがほとんど。
しかし経済学的には、逆の捉え方をすることが多いです。
それは、
インフレ=モノに対して相対的に『通貨の価値が下がっている』という捉え方です。
どういうことかと言うと
ということです。
預金封鎖により、自由に円を使えなくなることで『円は希少なものだ!』と捉えられ、価値が上昇します。
預金封鎖で、国の収入が増える理由
預金封鎖で直接的に、国の収入が増える訳ではありません。
預金封鎖により国の収入が増えるのは、預金封鎖と同時に『政府が預金の一部を徴収する』ためです。
以上のように、預金封鎖後に政府が『預金の一部を徴収』あるいは『一定の税金を徴収』といったかたちで、国の収入を得ることがあります。
国が預金の一部を奪うために、預金を引き出せなくするってことですね!
今、なぜ預金封鎖がウワサされるのか?
今、日本で預金封鎖がウワサされる理由は『1946年に日本で預金封鎖された状況と似ている』から、と推察されます。
何が似ているかというと
- インフレ
- 新札を発行するタイミング
の2点です。
ここで重要なのは…
1946年に似ているだけで同じではないこと。詳しくは続きをご覧ください。
預金封鎖の可能性2024年
それでは、日本で本当に預金封鎖が行われるのか?
現役の金融マンの視点でこたえると、預金封鎖の可能性は限りなく低いと考えています。
理由は大きく4つです。
可能性が低い理由①:動機がない
預金封鎖の可能性が低い最大の理由が、預金封鎖を行う動機がないことです。
でも、今ってインフレ状態なので、預金封鎖でインフレ抑制すべきでは?
現在は、インフレ状態ではなく、デフレ(モノの価格が低すぎる状態)から抜けようとしている状態です。1946年の第二次世界大戦後の経済混乱期とは、全く違います。
1946年にもあった新札発行のタイミングじゃないか!
1946年は、新札発行があったから預金封鎖をしたのではなく、預金封鎖の効果をより強めるため、新札発行をきっかけに預金を集めた上で、預金封鎖と預金の没収を行ったのです。
可能性が低い理由②:法的根拠がない
1946年に日本で預金封鎖が行われた際は、金融緊急措置令(昭和21年2月17日公布即日施行)に基づき、預金封鎖が実行されました。
この金融緊急措置令は、昭和38年7月22日に廃止されています。
したがって現状、日本で預金封鎖を行おうとしても法律上、不可能です。
もちろん、今から関連法案を整備することはできますが、その場合には次の理由③で、預金封鎖は困難だと考えられます。
可能性が低い理由③:効果がない
これから預金封鎖を行う場合、預金封鎖を可能とする法律を施行する必要があります。
インターネットはおろかテレビも普及してなかった1946年であれば、密かに法律を制定して預金封鎖できたでしょう。
しかし、情報にあふれる現在では、預金封鎖に関する法案の審議を開始した時点で、日本全体に知れ渡り、預金が封鎖される前にお金をおろされると考えられます。
つまり、預金封鎖の効果は発揮されません。
可能性が低い理由④:できない
また、銀行の立場からすると「事務上、預金封鎖は非常に難しい」です。
1946年当時は、銀行窓口での出金を止めるだけで済んでいた預金封鎖。
現在では、お金を引き出すには「ATM」「インターネットバンキング」等があり、また自動で預金口座から引き落される「自動振替」や「デビッドカード取引」など、預金が使われる方法は数多くあります。
これら、一つひとつの取引を停止すること自体が困難ですし、口座振替の中には税金収納などもあることから、政府が預金封鎖を行う意義に欠けると考えられます。
ATMが登場したのが1977年。
IBは1990年代。
口座振替は1961年。
今後、私たちが注意すべきことと対策
預金封鎖の可能性は極めて低いです。
しかし万が一、預金封鎖となった際に困らないよう経済・金融動向を注視しましょう。
そして、もし預金封鎖の検討が始まった場合には、預金以外の方法で資産を保有するようにしましょう。
具体的には以下の方法があります。
- お金をおろして、現金で持っておく
- 外国の銀行に送金する
- 投信・不動産・金などの資産
まとめ
今後、日本で預金封鎖が行われる可能性は極めて低いです。なぜなら
- 預金封鎖を可能とする法律は廃止されている
- 預金封鎖しようとしても、意味・効果がない
- お金をおろす手段が多すぎて事務上、困難
- 預金封鎖が必要なほどインフレではない・日本財政は緊迫してない
といった理由が挙げられます。
とはいえ、万が一にも預金封鎖が行われないか金融・経済動向には注意しつつ、ご自身の財産を守るよう心掛けましょう!!