長く銀行員をしている中で、もっともよく質問されるのが
自分のお金を引き出すだけなのに
なぜ理由を聞かれるの?
という疑問です。
人によっては
お金をおろさせないつもり!?
資産運用など勧誘されるのかな…
などネガティブに感じる人もいますよね。
100万以上のお金をおろす際、窓口の行員が理由を聞くのは
- 法律で理由を聞くよう定められているため
- 皆さんの資産を詐欺から守るため
という2つの事情があります。
この記事では
の4点について詳しく解説します。
近々、銀行でお金を引き出す予定がある人は、是非ご覧ください!
銀行の窓口で100万おろす理由を聞かれるのはなぜ?
冒頭で紹介したとおり、100万おろす理由を聞くのは
- 法律で理由を聞くよう定められているため
- 皆さんの資産を詐欺から守るため
という2つの事情があります。
詳しく見ていきましょう。
法律で定められている
銀行が守るべき法律の一つに、犯罪による収益の移転防止に関する法律があります。
この法律の中で『金融機関は高額のお金をおろす顧客に対し、何の目的でお金をおろすのか確認すること』が義務づけられています。
銀行では、犯収法(はんしゅうほう)と略します。
金融機関等は、顧客との間で定める取引を行うに際しては、当該顧客について以下に掲げる事項の確認を行わなければならない。
犯収法第四条を簡易表現
一 本人特定事項
二 取引を行う目的
・・・
犯収法は、犯罪で得たお金が犯罪者の手にうつることを防止するための法律。
簡単に言うと
- あなたが犯罪者の手先で
- 犯罪で得たお金があなたの個人口座に入り
- そのお金をおろして、犯罪者集団に渡す
これを防止するための法律です。
つまり、銀行は「窓口で100万以上のお金を引き出す人が犯罪者じゃないこと。お金を犯罪者集団に渡すわけじゃないこと」を確認しているということです。
疑われるのは不快かもしれませんが、あなただけでなく全員確認されます。
詐欺からあなたのお金を守る
高齢者を狙ったオレオレ詐欺
大金をチラつかす還付金詐欺
銀行員になりすまし詐欺
など、世間には様々な詐欺があります。
このような詐欺にだまされて、お金をおろそうとしてないか?
この懸念を確認するため、100万以上のお金を引き出す理由を聞くことがあります。
そんなことして意味あるの?
と思うかもしれませんが、お金をおろす理由を聞くことは犯罪防止にとても効果があります。
私が属する銀行では月1回くらいは、取引理由を聞くことで特殊詐欺を防止しています。
100万おろす理由を聞かれたら、どう答えればいいの?
銀行が100万おろす理由を聞くのは、とりわけお客様のためであるということがお分かり頂けたと思います。
となると、次に気になるのは『どのように回答すべきか?』。
銀行側の想定回答は以下のようなもの(金融庁「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」より)。
では、具体的にどう答えるか?
現役銀行員の視点で申しますと『本当のことを差し支えない範囲で話す』を回答の基本とすべきと考えます。
繰り返しになりますが、お金をおろす理由を聞くのは、犯罪への加担と詐欺被害を防止するため。
特に、詐欺の手口は巧妙化してきており、お金を奪われた後で、詐欺に気づくケースは多いです。
しっかりと、何のためにお金をおろすのか説明しましょう。
とはいえ…
例えば「車を買う」等の理由だと、ローンを勧誘されそうで、イヤだという人もいると思います。
そんな人のために、回答の注意点を詳しく解説していきます。
避けた方がいい回答
取引をひき止められたり、勧誘を受けたくないなら、以下の回答は避けた方がよいです。
- 車を買う
⇒カーローン勧誘 - 住宅購入の頭金
⇒住宅ローン勧誘 - 子どものために…
⇒教育ローン - 証券会社にうつす
⇒資産運用の勧誘 - 他の銀行にうつす
⇒取引をひき止め
オススメの回答
車購入や住宅購入の頭金など具体的な使い道をいうと、ローン等を勧められます。
具体的に言わず、されどそれ以上つっこまれない回答が『趣味でちょっと大きな買い物するんです』。
もし、続けざまに銀行員が
趣味って何ですか??
と聞いてきたら
『え゛。そこまで言わないといけないんですか!?』と答えれば、大抵は引き下がります。
100万おろす理由の他に聞かれること
今回の記事では「取引理由」を中心に解説してきました。
しかし、その他にも聞かれることがあります。それぞれ簡単に紹介していきます。
本人を特定する情報
100万をおろそうとしている人が、口座名義人本人であることを確認するため
- 氏名
- 住所
- 生年月日
を聞かれます。
また、それらが本当であることを確認するため、運転免許証などの本人確認資料の提示も求められます。
職業
お金をおろす理由やおろす金額の妥当性を確認するため、職業・勤務先なども聞かれます。
- 大富豪でもないのに、生活費として100万おろす
- 普通の会社員なのに、数千万円も出金する
などのあやしげな取引でないことをチェックするのです!
なお職業・勤務先は、証明するものは必要ありません。
100万おろす以外にも、理由を聞かれる取引とは?
100万おろす以外にも、取引理由・本人特定情報・職業を聞かれる取引があります。
代表的な取引を紹介します。参考までにチェックしましょう!
- 10万円超の振込み
- 新規の預金口座開設
- 信託取引の開始
- 貯蓄性保険契約
- ローン契約
- 貸金庫など継続的な取引開始
まとめ
銀行で100万おろすとき、窓口でいちいち理由を聞くのは、犯罪者への資金移転防止と詐欺被害防止の2つの目的があります。
決して、銀行都合ではありません!
お金をおろすのをひき止められたり、ローンの勧誘を受けたくない人は『趣味でちょっと買い物します』等と回答するのはアリですが、基本的には可能な限り、お金をおろす目的はしっかりと伝えましょう!