『35年で住宅ローンを組める』と知り、驚いたあなた。
昨今では、最長50年の住宅ローンもあります。
住宅ローンの長期借入れはトレンド!
インターネット上では、『35年ローンは損』や『35年ローンなんて頭おかしい』といったネガティブな声もあります。
しかし、現役銀行員の視点からすると、短期のローンも35年ローンも大切なのは
- 銀行員の言いなりにならないこと
- 無理なく毎月返済できるように借りること
この2点を十分に意識して、ローンを組めば全く問題ありません。
この記事では、
- 住宅ローンを担当する銀行員の心理
- 銀行員との住宅ローン商談のコツ
を紹介します。是非ご覧ください!
35年ローンは一般的なのか?
結論から言いますと、35年の住宅ローンは一般的な商品です。
客観的な事実を紹介すると、
- ほとんどの銀行が、35年以上の住宅ローンを取り扱っている
- 35年どころか、もっと長い40年・50年住宅ローンすらある
というのが現状です。
具体的に35年・40年・50年それぞれの取扱い状況を確認してみましょう(2023年12月時点)。
(追加情報)大分銀行が50年ローンの取扱いを開始しました。:2024年6月9日
調査したのは、都銀・ネット銀行・第一地銀です。
今回の調査では、
- 35年住宅ローンが20行
- 50年住宅ローンは19行
- 最も多いのが40年住宅ローン
という結果になりました。
結論、今もっともメジャーな住宅ローンは、35年よりも長い40年の住宅ローンであることが分かりました!
35年ローンのデメリット
35年の住宅ローンは一般的であると分かったとはいえ、これだけの長期借入です。
口の悪い人たちが「頭おかしい!」と言う理由にも一理あります。
ということで、35年ローンを組み人は頭おかしいと言われる6つの理由を紹介します。
- 借りられる年齢
- 支払う利息額
- 安定収入
- 離婚・離別問題
- 老人になっても返済
- 金利上昇
詳しく見ていきましょう!
借りられる年齢
ほとんどの銀行で、35年ローンの申込み条件に『完済時点の年齢が80歳未満』があります。
つまり、借入れ期間35年で借りるには、45歳未満である必要があります。
しかも、これは申込み条件です。
当然、申し込んだあと、銀行と保証会社の審査があります。各社の審査では、年齢が高いほど承認されにくい傾向があります。
早めに申込む方がよいですね!
支払う利息額がとんでもない
35年間ずっと借り続けると、支払う利息額がとんでもない金額になります。
具体的に計算してみましょう。
計算は、金融広報中央委員会の知るぽるとのツールを使ってます。
- 4,000万円・35年・1%・ボーナス返済無
⇒総利息額は、7,423,880円 - 5,000万円・35年・1%・ボーナス返済無
⇒総利息額は、9,279,640円 - 6,000万円・35年・1%・ボーナス返済無
⇒総利息額は、11,135,820円
やや高めの1%計算ですが、
6,000万円を35年で借りるとトータルの利息額は1,100万円を超えるという結果に。
35年間も安定した収入が必要
35年間、毎月必ず数万円から10数万円を支払わないといけない。
つまり、長期にわたり
- 安定した収入を確保し続け
- 想定外の大きな支出ができない
といった点もリスクと言えます。
意外と多い離婚・離別問題
先ほど紹介した『想定外の大きな支出』と似たもので
長期にわたり、想定外のネガティブな出来事を発生させられないことも不安材料です。
銀行員としての経験上、もっとも多い事例を挙げると離婚・離別問題があります。
例えば、ご夫婦で住宅ローンの債務を引き受けている状況(夫婦連帯債務)で、離婚や離別すると
といった話になり、かなり揉めます。
老人になっても返済
35年間、安定して払い続けないといけない。
これは、老人になっても返済し続けないといけないということ。
例えば
- 25歳で借りたら60歳まで
- 30歳だと、65歳まで
- 40歳だと、なんと75歳まで
返済し続けないといけない。
やはり不安感はぬぐえませんよね。
金利上昇に怯える35年
毎月の返済金額を少なくできる。
このメリットのために、35年などの長期ローンを組む人が多いでしょう。
ただし、変動金利を選択している場合、金利が上昇すると返済額もいずれ(※)増えます。
※住宅ローンは、5年間周期で返済額が見直されます。以下ご参照。
つまり、
『35年間、金利上昇により返済金額が増えること』を心配し続けないといけません。
なお、2024年9月にメガバンク3行は、短期プライムレートの上昇に伴い、住宅ローン変動金利も引き上げることを発表しました。
ついに、金利ある世界が幕を上げました!
35年ローンのメリット
デメリットが多く、結構リスクも高い35年の住宅ローン。
では、逆にどのようなメリットがあるかをチェックしましょう。
メリットの柱は、毎月の返済額が少ないこと!
毎月の返済額が少ない
繰り返しになりますが、毎月の返済額が少ないことが長期の住宅ローンの最大のメリット。
5,000万円を借りるケースを例に、返済額をシミュレーションします。
- 5,000万円・10年・1%・ボーナス返済無
⇒毎月返済額は、438,020円 - 5,000万円・20年・1%・ボーナス返済無
⇒総利息額は、229,947円 - 5,000万円・35年・1%・ボーナス返済無
⇒総利息額は、141,142円
ご覧のとおり
35年で借りた場合の返済額の少なさは圧倒的です。
生活にゆとりができる
最大のメリット『毎月の返済額が少ない』がゆえに、ゆとりある生活が期待できることも、35年住宅ローンのメリットです。
ゆとりとは
など様々な面があります。
他の借入れがしやすい
『毎月の返済額が少ない』ゆえに、他の借入れがしやすい点も大きなメリットです。
銀行は、返済比率という指標をもとに、お金を貸すかどうかを判断します。
簡単な例を挙げると
- 年収600万円で、年間のローン返済総額が400万円の人
には、お金を貸しにくいですが
- 同じ年収600万円でも、年間ローン返済総額が100万円しかない人
だと、新たにお金を貸してもまだ大丈夫。
つまり、住宅ローンを借りていたとしても、35年借入れのおかげで、毎月(年間)の返済額が少ないと、新たな借入れがスムーズにできる可能性が高いということです。
住宅ローンを担当する銀行員の心理
ここまで紹介してきた35年ローンのリスク。
これらリスクを少しでも軽減して、住宅ローンを借りる第一歩として
- 銀行員の言いなりにならないこと
が大切です。
そのためには、まず住宅ローンを担当する銀行員の心理を知っておきましょう。
長く借りさせたい訳ではない
銀行員は営業目標を達成するため、借入れ期間が長いローンを組ませようとしている…
と考える人がいるかもしれません。
これは間違いです。
銀行員の営業目標は、住宅ローン実行金額だけです。
長く借りさせたとしても、銀行員は評価されません。
「35年ローンのリスク」で紹介したとおり、長く借りさせるほど銀行が得る利息は増えます。
しかし、繰上げ返済などを行われると、その利息は得られません。
未確定な収益ということ。
したがって、長く借りさせても確実に銀行が儲かるわけじゃないので、長く借りさせたところで住宅ローン担当者は評価されません。
絶対に借りさせたい!
銀行員の行動原理は、ただ一つ「営業目標を達成すること」
そして、先ほど紹介しましたが営業目標は「住宅ローン実行金額」
したがって、住宅ローンの見込みがあるお客様を前にすると、『借りる期間が短くても長くても、とにかく契約して実行したい!』
この一心で、営業トークを繰り広げます。
数多くの商談をこなしたい
次に、銀行員が思っていることは
『営業目標を達成するために、数多くの案件をさばかなきゃ!たくさん商談するぞ~』
目標「住宅ローン実行金額」が10億円とすると、1契約5,000万円として20件の契約が必要です。
そのための商談は、最低でも40件は必要。ちなみに、この数字は半年で達成しないといけない目標です。
ということで、あなたとの商談。
大事な商談ではありますが、できる限り早く無事に終わらせたいという気持ちで臨んでいます。
商談ですからね…
当り前といえば当り前ですね。
口説き文句「35年も借りられる」
銀行員の2つの心理
この2つの心理から、銀行員は
(毎月の返済額が少なくなる、35年借入れが喜ばれるだろ…)
と安易な発想をしてしまい
『35年でお借入れ頂くと返済額が抑えられます。借りやすいでしょ、是非うちで!』
といった言葉を投げかけてくるのです。
顧客ニーズに鈍感
住宅ローンを担当する銀行員は若手が多いです。
これは、銀行の融資業務の育成プランとして
- まずは最もシンプルな無担保ローンを経験
- 次に住宅ローンを担当することで、不動産担保を学び
- 最後は、様々な担保が登場する法人融資を担当する
といった流れがあるから。
経験が浅い銀行員が担当するため
といった状況になりやすいです。
住宅ローン商談のコツ
ここからは、先ほど紹介した銀行員の心理をふまえて、住宅ローンの商談で
- 銀行員の思惑や誘導をかわし
- むしろ銀行員をうまく使う
その方法やコツを紹介します!
借入れ期間は自由
念のため、お伝えしますが
借入れ期間は、銀行が指定する範囲で、あなたが自由に決められます。
キリがいい年数じゃなくてよい
これまた念のためですが…
23年とか29年とか。銀行によっては、31年5か月などキリがよくない年数でも借入れることが可能です!
毎月返済額を決める4つの要素
住宅ローンの毎月返済額は、以下4つの要素で決まります。
- 借りる金額
基本的には、購入する物件(+諸経費)から頭金を差し引いた金額になります。 - 加算返済割合(ボーナス返済割合)
借りる金額のうち、ボーナス月など年2回だけ加算返済にまわす割合 - 金利
各銀行ごとの住宅ローン金利 - 借入れ期間
各銀行ごとの住宅ローン借り入れ期間
絶対、明確にすべきこと
商談の前に準備すべきは、ただ一つ。
自分にとって適切な毎月返済額はいくらかを明確にすることです。
『適切』というのは以下の2つの観点で検討を。
- 毎月の生活が苦しくない水準
- あまりに低すぎない水準
では、具体的に「適切な毎月返済額」を把握する方法をお伝えします。
方法①今、支払ってる家賃を基準にする
最も分かりやすい方法は、新しい家に引っ越すと支払う必要がなくなる金額を基準にする方法。
引越しにより浮いたお金を、そのまま住宅ローン返済に充てるという考え方です。
少なくとも、現在の家賃。
その他にも、駐車場代や交通費なども不要になるなら、それらを合算した金額を基準にしましょう。
もちろん、現状の生活ぶりがカツカツなら、いくらか差し引きしましょう!
方法②返済比率を基準にする
返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合。
年間返済額には、マイカーローン、カードローンの支払やクレジットカードのリボ払い、奨学金の返済なども含まれます。
みずほ銀行
返済比率は、( 年間のローン返済金額 ÷ 年収 )×100で計算され、低いほど良いとされています。
低いほど、ローン返済よりも年収の割合が大きいからね!
返済比率は30~40%以内が適切というのが一般論。
しかし、現役銀行員の目線で申しますと、これはかなり危険な見方と感じます。
理由は
- 実際の生活で使える手取り収入は、年収の8割くらいだから
- 40%をローン返済にまわすのは、さすがにキツイ
といったところ。
基準にすべき返済比率は
( 年間のローン返済金額 ÷ 年収の8割 )×100 が、20~30%以内になる返済金額を目指すべき。さらには、年収が低ければ20%以内に抑えましょう。
例えば
- 年収400万円の場合
400万円の8割 × 20% = 64万円より、年間ローン返済は64万円以内。毎月返済は53,000円以内。 - 年収800万円の場合
800万円の8割 × 30% = 192万円より、年間ローン返済は192万円以内。毎月返済は16万円以内。
といった金額水準になります。
方法③年間収支を基準にする
最も古典的な方法では
年間でいくらプラスになっているかを基準にする方法もあります。
計算の例を紹介すると、
- 去年の3月31日の預金残高を確認
- 今年の3月31日の預金残高を確認
- 差し引きした金額を算出
これが、年間収支金額になります。
詳しくはこちらの記事ご覧ください。
頭金の最大金額も事前に想定
最適な毎月返済額とあわせて
住宅を購入するときに、最大でいくらまで頭金を出せるのかも想定しておきましょう!
頭金は、借りる金額を決定する上で重要な要素です。
もしも、借入れシミュレーションを行う中で、返済金額が多い場合には『頭金を増やして、借入れ金額を減らしたパターン』を追加シミュレーションを行いましょう。
なお、銀行員との商談においては
事前に決めた毎月返済額になるよう納得いくまで借入れシミュレーションを依頼することが重要!
銀行員は特殊な電卓(ローン電卓)を持っており、簡単に借入シミュレーションができます。
担当者が嫌がったら、担当変更を要請しましょう!
なお、借入れシミュレーションで試してもらうのは
- 借りる金額
- 加算返済割合
- 借入れ期間
の3つです。
シミュレーション時の会話は、以下を参考にしてみてください。
5,000万円を35年でシミュレーションしました!
ん~。
毎月の返済額はもっと多くていけます。
期間を31年にしてもらえます?
分かりました。
…シミュレーション中…
返済額がだいぶ増えましたね。
返済額、だいぶ増えますね。
住宅購入時の頭金を増やすとして、31年のまま4,500万円でお願いします。
…シミュレーション中…
先ほどの返済額より、やや減りましたね。
もう少し毎月返済を減らしたい。
夫にはボーナスがあるので、
借入れの30%を加算返済にしてシミュレーションを。
承知しました!
…シミュレーション中…
結構イイ感じの返済額では!?
いいですね!
この借り方でお願いしようかしら。
ありがとうございます!!
まとめ
35年の住宅ローンは、長期の借り入れです。
したがって、
- 支払う利息額が大きくなる
- 35年間の安定収入が必要
- 離婚などのアクシデントに弱い
- 老人になっても返済要
- 35年間も金利上昇にビクビク
といったリスクがあります。
しかし、銀行員に35年ローンを提案されても、必ず従う必要はありません!
住宅ローンの商談時には
- 事前に、ご自身にとって適切な毎月返済額を決めておき
- 銀行員に何度も借入れシミュレーションをさせつつ
納得いく借入れ条件にたどり着くようにしましょう!