2022年12月、日本銀行が発表した「長期金利の実質的利上げ」のニュース。
相次ぐ、都銀を中心とした「固定金利の利上げ」のニュース。
長期金利の動向が、私たちの住宅ローンにどのくらい影響を及ぼすのでしょうか?
今回の記事では・・・
- 住宅ローンを借りてるけど、長期金利のニュースを見るたびに不安になる
- これから住宅ローンを借りようと思うけど、すごく心配・・・
と感じている皆さんに向けた
『住宅ローンの金利の仕組み』解説の決定版。
「長期金利の利上げ」が、全ての住宅ローン利用者に影響するわけではないです。
この記事を読んで、ご自身への影響を正しく把握し、必要な対処をおこないましょう。
【前提】今、何が起きているのか?
まず始めに2022年12月の日銀発表の概要とその後の金利動向について、おさらいしましょう。
長期金利とは?
そもそも「長期金利とは何か?」については、日銀ホームページに以下の説明があります。
資金の貸し借りの期間が1年超の金利を、長期金利といいます。
日銀HP(https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/grossary/market/m09.htm/)
長期金利の代表的なものは10年物の国債利回り(国債金利)です。
分かりやすく言うと「1年を超えてお金を貸すときの金利のこと」です。
“お金を貸すとき”とは、
- 銀行が企業にお金を貸すとき
- 企業が債券を発行してお金を調達するとき
など様々あります。
今回、日銀のいう「長期金利」とは、国が発行する10年満期の債券(10年満期国債)の金利のことです。
この10年満期国債が、住宅ローンをはじめ色々な金利に関連するので、今回おおきな話題になってるのです!
日銀は何を発表したのか?
日銀が発表したのは
『10年満期国債の金利が変動する範囲を、今まで-0.25%~0.25%までだったけど、-0.50%~0.50%までOKにする』ということです。
正しく理解しておきたいことは
- 長期金利を『0%程度』で調整する方針に変更はない
- この『程度』の範囲が、±0.25%でなく±0.50%までOKになった
ということです。
今回は『長期金利をあげる準備をした』といったイメージです!
日銀の発表後
日銀の「長期金利をあげる準備」発表後、すぐさま市場は反応。
10年満期国債に売り注文が入り、長期金利は一気に+0.50%近辺に跳ねあがり、同時に
- 都銀を中心に「固定金利の利上げ」
- 日銀が金利を抑えるため「10年満期国債の買い入れ」
が行われました。
【本題】住宅ローンはどうなるのか?
あがる準備が整った長期金利。また、いくつかの銀行では、実際に住宅ローンの固定金利が利上げされています。
この固定金利の利上げは、私たちにどのような影響をもたらすのでしょうか?
結論としては、
- 新たに住宅ローンを借りる人が、固定金利をえらぶ場合
- すでに住宅ローンを借りてる人が、新たに固定金利をえらび直す場合
今までよりも住宅ローンの金利が高くなる可能性がでてきます。
あれ?金利が高くなる影響をうけるケースってかなり限られてますね!
まずは「固定金利」とは何かですが、住宅ローンの金利には
- ずっと同じ金利の「固定金利型」(5年などの期限つき固定金利も含む)
- 一年に数回だけ金利が見直される「変動金利型」
の2つの種類があります。
そして、「固定金利型」と「変動金利型」には、もう1つの大きな違いがあります。
それは『金利見直しの基準となる指標』です。
- 「固定金利型」は、日銀の長期金利に連動する
- 「変動金利型」は、短期プライムレートに連動する
一年という短い期間で金利が見直される「変動金利型」は、10年物の長期金利とは連動しないんだね!
ということで、長期金利が高くなることで影響を受けるのは「固定金利型」だけということになります。
さらに、すでに「固定金利型」をえらんでいる場合は、ずっと金利が変わらないので、長期金利の変動の影響を受けません。
以上のことから、固定金利が上がったとき、影響をうけるのは
『新たに「固定金利型」をえらぶケース』ということになるのです。
【追加】「変動金利型」住宅ローンを利用している皆さんへ
日銀の長期金利の動向に影響を受けない「変動金利型」の住宅ローンを利用する皆さんにも、知っていただきたいことがあります。
「変動金利型」は金利があがらないのか?
皆さんが気になるのは、「変動金利型」の基準となる短期プライムレートは高くならないのか?
すなわち、「変動金利型」住宅ローンの金利はあがるのか?という点ですよね。
結論としては、
- 今後、短期プライムレートが高くなる可能性は、ふつうにある
ということです。
この場では、その可能性が高いのか、低いのかは述べません。
なぜなら、その可能性は日銀の金融政策と金利動向、外国為替・世界情勢など様々な状況で、刻一刻と変化するからです。
2023年3月10日:FRBの長期金利の利上げを背景に『シリコンバレー銀行が経営破綻』。急激な利上げに、待ったをかける事案が・・・
この記事を執筆した2022年12月には、想定しえなかった事件が起こるということですね。
大事なのは、短期プライムレートが高くなり
「変動金利型」住宅ローンの金利もあがったとき、返済の負担はどうなるのか?
ということです。
結論をいうと、
ほとんどの住宅ローンが、一定期間は返済金額はそのまま変わりません。
「変動金利型」の金利があがると返済金額はどうなる?
「変動金利型」の住宅ローンの多くには、5年ルールと125%ルールというものがあります。
ご自身の住宅ローンにルールが適用されてるか分からない人は、住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約証書)を確認してみてください。
この2つのルールは、金利が高くなったときに、いきなり毎月の返済金額が増えることを防ぐものです。具体的には以下のとおり。
- 5年ルール:金利が高くなっても、5年間は返済金額が変わらない。
- 125%ルール:5年後に返済金額を見直すとき、今の返済金額の125%以上にはしない。
返済金額が変わらない5年間で、毎月のお金のやりくりを工夫して、返済金額の見直しに備えることができます。
この素晴らしい仕組みではありますが、1点のデメリットがあります。
金利があがり、5年ルールが適用された場合、『同じ返済金額でも、内訳を見ると借りた元金額の返済分が少なくなる』というデメリットが発生します。
つまり、借りた住宅ローンの残高が少しずつしか減らないということになります。
まとめると、
「変動金利型」住宅ローンの金利があがった場合、5年ルールの適用があれば、5年間は毎月の返済金額は変わらない。ただし、借りた住宅ローンの残高の減るスピードは遅くなる、
ということです。
なお、5年ルールの適用がない住宅ローンを利用している場合は、毎月返済金額が変わるものと思われます。気になる人は、金融機関に聞くことをおススメします!
まとめ
「日銀の長期金利」と「住宅ローン金利」の話をして参りました。まとめると・・・
- 2022年12月、日銀が『長期金利の変動範囲について、今まで±0.25%だったが、±0.50%までOKにする』と発表。
- いますぐ長期金利をあげるわけではないが、これから長期金利が高くなる可能性あり。
- 長期金利が高くなると、住宅ローンの「固定金利型」を新たに選ぶ場合、影響を受ける。
- 「変動金利型」住宅ローンの金利は、短期プライムレートがあがると、高くなる。
- ただし、5年ルールと125%ルールの適用がある住宅ローンだと、5年間は毎月返済金額が変わらないので、その間で毎月の家計を見直すべき。
様々なネットニュース等を見ると、危機感を覚えますよね。
しかし、今回ご説明したように、人それぞれローン契約の内容によって影響は異なります。
もし、じぶんの住宅ローンの契約内容が分からない人は、銀行に聞きましょう。平日、銀行に行けない人は、土日もやっているコールセンターにお問合せを。
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自分の状況を正しく理解し、適量の危機感を持ち、健やかな日々を過ごしましょう!