2023年6月、地銀業界に驚きが走りました。
『京都銀行がChatGPTを使うらしい・・・』
やっぱ京都銀行ってトガッてるよね・・・
京都銀行さんはIT部門、強いからなぁ。
それにしても思い切ったね・・・
京都銀行サン、ヨロシクデス
といった声が巻き起こっている地銀界隈。
京都銀行が何をしようとしているのか?
そして、どんな結果が待っているのだろうか?
色々な疑問が渦巻く中、この記事では
- 京都銀行がChatGPTで何をしようとしているのかを確認しつつ
- 期待される効果と他の地銀への広がりを予想し
- 他行にも広がるとしたら、ChatGPTにどんなリスクがあるかを整理
の3つのテーマについて解説します!
地域銀行初!京都銀行がChatGPTの試行導入!
まず初めに「京都銀行におけるChatGPT導入の目的」を確認しましょう。以下の内容は、同行のプレスリリース内容を整理したものです。
【目的】は、
- 業務の効率化
- 生産性向上
- 行員のITスキル向上
の3つ。
3つありますが、端的には
『業務効率化』と『行員教育』の2つですね!
では、ChatGPTで
【何を効率化する】のか…
- 文章の作成や要約
- プログラム・コード作成
- アイデアの創出
が具体例として示されています。
当然、成果物がテキストであるタスクを効率化するようです。
その結果【期待】されるのが…
- 情報収集や文章のドラフト版を作成する時間が削減できる
ということのようです。
京都銀行のChatGPT導入効果を予想!
現役銀行員の目線で、京都銀行のChatGPT導入効果を勝手に予想します!
まず、やるべきか否か?
私は、絶対にやるべきと考えます。
こんなのやっても意味ねーよ!
というレガシーじじいがいるかもしれません。
しかしながら、
- 成果のほど(意味があるか)は、やってみないと分からない
- 効率化の効果が無ければ止めればいい
- ChatGPTは低コストで導入できるので金銭的ロスは少ない
- やらないと、他の産業・業態にいっそう後れを取る
などの理由から『絶対にやるべき』です。
行内での反対もあったでしょう。
しかし、そんな声はぶっ飛ばして、導入を決めた京都銀行。
やはり、素晴らしい銀行です…!
ChatGPT導入は「文章を書く」の効率化
京都銀行の使い方を一言でいうと『文章のドラフト版の作成』ということになります。
つまり、効率化されるのは『文章を書く』時間。
したがって、ChatGPT導入効果の予想は
『銀行で文章を書くシーンがどれほど多いか』を軸に考えていくべきです。
文章を書くシーンは結構ありますが、効果がありそうなものは太字のものくらい。
ここからは、効果が期待できないものについて、期待できない理由を詳しく見ていきましょう。
顧客面談記録
お客様との会話や交渉内容を記録するもの。
各行で記録ルールは違えど、基本はお客様とのやり取りをそのまま記録します。
したがって、ChatGPTが得意な
- うまい言い回し
- 様々な知識や情報
- ロジカルな文章
は必要ありません。
人と人のコミュニケーションは、ChatGPTに代替できない部分!
与信関連の稟議書
ChatGPTで効率化できそうですが、利用されるケースは少ないと予想されます。
なぜなら
ほとんどの稟議が、過去稟議のコピペで対応可能。ChatGPTを使う方が非効率。
だからです。
コピペで対応できない高度な稟議の場合はChatGPTの効果があるかもしれません。
期初の目標設定・人事評価
これも基本的には「与信関連の稟議書」と同じ理由。
過去の目標や評価をコピペで対応するのが基本かと思います。
コレは、私が属する銀行だけかもしれません!
他の銀行では、パーソナライズドして人事評価してるかも…。
社内・社外メール
まずもって、メールくらい一瞬で作成・送信しましょう!
メールを送る程度のことに時間がかかる行員に、ChatGPTを与えたところで何をやってもダメ。
ChatGPTで効率化しても、他の仕事の効率が上がらないので意味ないでしょう。
ChatGPT導入の効果は『限定的』と予想
私はChatGPTを導入しても
『効果はかなり限定的』
と予想しています。
効率化できそうなのは「難易度の高い与信稟議書」「顧客向けの提案書」「始末書等」「企画書等」。
これらシーンの特徴は2つ。
- これらのシーンは頻度が少ない
- 優秀な銀行員が出くわすシーンがおおい
まず1.ですが、始末書を書くことなんかめったにありません。私は10数年の銀行員生活で一度も書いたことがありません。
次に2.ですが、高度な与信稟議や企画書・提案書を作成する優秀な銀行員は、もともと仕事が早いです。したがって、ChatGPT導入しても、優秀な銀行員たちが「ラクになった~」と感じる効果はあっても、効率化の面での効果はかなり限定的と予想されます。
優秀な銀行員が「ラクになった~」と感じても、彼らにはまた別の案件が舞い込んできて
結局は忙しい日々が続くのです。
もし銀行でChatGPTを使ったら…?
ChatGPTを銀行で使うことを想定して、いくつかの実験を行いました。
それぞれの内容は以下のリンク先にまとめています。
もし、自行でChatGPTの導入を検討している方は、参考にしてください!
■銀行に関する質問に答えられるか検証
■銀行でのChatGPT活用を考えてみた!
■銀行での悩みをChatGPTに相談してみた!
ChatGPT導入は地銀には広がらない!
銀行、特に地方銀行は保守的なので『ChatGPTは地銀には広がらない』と予想します。
保守的な銀行文化について知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
■いかに銀行がクソな組織か!?
唯一、ほかの地銀もChatGPTを使い始めるシナリオがあるとすれば・・・
『金融庁からの圧力』のみ!!
ChatGPTを使う上でのリスクについて
とても先進的な京都銀行。
しかし、プレスリリースに1つの疑問が。
厳格なセキュリティ基準のもと運用されており・・・
地域金融機関初 生成AI「ChatGPT」の試行導入決定!
「入出力情報のセキュリティ管理だけしていればよい」とお考えではなかろうか?
言い換えれば、
『ChatGPTを使うリスクをどこまで把握・許容してらっしゃるのだろうか?』
ということで、最後に『ChatGPTを使う上でのリスク』について深堀っていきたいと思います。
リスク①:情報漏洩リスク
言わずもがなの情報漏洩リスク。
例えば、
- ChatGPTのプロンプトで入力した顧客情報や機密情報が漏洩しないか?
- ChatGPTの出力に含まれる顧客情報等が外部流出しないか?
といったリスクです。
このリスクは想定しやすく、京都銀行では
ChatGPTは、厳格なセキュリティ基準をクリアしたクラウド基盤上で利用する
といったリスク対策を行っているようです。
■プロンプトとは?コチラの記事をご参照ください。
リスク②:不正確リスク
ChatGPTの出力内容が正確でないリスクもあります。
■ChatGPTの正確性を検証した記事はコチラ。
例えば「顧客からの問合せ対応」にChatGPTを使う場合、ChatGPTの回答が間違っていると、銀行の信用力が失われてしまいます。
また『ChatGPTの回答を銀行員が確認し、顧客に回答する』という活用方法も考えられます。
この場合、ChatGPTの特性である自然な言葉遣いが懸念材料になります。
ChatGPTの言葉遣いがうますぎて、間違った内容であっても、経験の浅い銀行員だと正しい回答と誤認してしまう恐れがあるのです。
したがって、不正確リスクに対しては
顧客対応など絶対に間違い・ミスが許されない業務には、ChatGPTは一切つかわない
があるべき対処策と考えられます。
リスク③:知財・著作権侵害リスク
ChatGPTは、インターネット上のあらゆる情報を入力として事前学習を行っています。
このあらゆる情報の中には、知的財産や著作権を有する情報が含まれており、現在ヨーロッパなどでは「ChatGPTが知財や著作権を侵害するのではないか?」と話題になっています。
なお、日本ではAIが事前学習で著作権物を利用することが認められています(著作権法30条の4)。
しかし、著作権侵害とまでいかなくても、ChatGPTが出した回答が偶然にも他社コンテンツと類似することで、苦情や訴訟につながる懸念があります。
ChatGPTの出力を対外発信に使う場合は
知財・著作権のみならず他社コンテンツを侵害してないことを網羅的にチェックする機能
が必要になってくるでしょう。
リスク④:無個性リスク
無個性リスクを分かりやすく表現すると『オリジナリティがなくなるリスク』。
ChatGPTは事前に学習した様々な情報をもとに、納得性が高い回答を出してます。
この納得性は、逆に言うと『誰にでも理解しやすい、平均的な回答』。
また、たとえChatGPTが奇抜な回答を出したとしても、他の銀行でもChatGPTが同じ奇抜な回答を出していたら、個性的とは言えません。
ChatGPTが出した答えを自分流(自行流)にアレンジすること
が極めて重要です。
まとめ
この記事では、京都銀行の素晴らしいチャレンジ『ChatGPT導入』の目的や効果について考察していきました。
ChatGPT導入の効果は限定的かもしれませんが、地方銀行は京都銀行のように新しいテクノロジーに触れていくべきです。なぜなら、ChatGPTをはじめ新たな技術群が世界を変えつつあるから。
もう、
- 中期経営計画で目標として掲げるだけ
- 偉い人が言うだけ
は止めて
リスクを取りましょう。
積極的にチャレンジしよう。
そして、たくさん失敗をしましょう。
その先に、地域と地域銀行が共存できる未来がきっと待っています。